橈骨神経(とうこつ神経) は腕に走る大きな神経のひとつで手首を伸ばしたり、指を伸ばすなどの伸展の動きや手首を右にひねる、回外(ドアノブをまわすのと反対の動き)という動きを支配している神経です。また感覚を感じる働きをする感覚神経でもあります。
腕に走る大きな神経は他に、正中(せいちゅう)神経、尺骨(しゃくこつ)神経がありますが、橈骨神経は非常に障害を受けやすく、私の拝見している限りでは、腕の神経麻痺で一番多いのがこの橈骨神経麻痺(とうこつ神経麻痺)です。
尺骨神経麻痺、正中神経麻痺もときどきみられますが、数は少ないです。まれに、橈骨神経麻痺と正中神経麻痺や尺骨神経麻痺が混在しているケースもみられます。
橈骨神経が障害されやすい場所は2ヶ所あります。橈骨神経は鎖骨の下からわきの下を通り、上腕(いわゆる二の腕)の外側に出てきますが、一つ目はわきの下での圧迫、二つ目は上腕の外側(力こぶの反対側)での圧迫です。特に二の腕の部分は上腕骨に接するように橈骨神経が走行すること、筋肉が薄い部分であるために、上腕骨に橈骨神経が圧迫されやすい状況にあり、一番障害を受けやすい場所です。
この2箇所を強く圧迫するような姿勢を一定時間続けると、気づいたときには腕はしびれ、手首が動かなくなっていた、手首に力がはいらなくなっていた、手がひらかなくなっていたというように発症することが多く、うたた寝などして起きたらなっていたケースが大半です。飲酒をしていて麻痺を発症することが多く、橈骨神経麻痺で当院を受診する方の7割は、飲酒後寝て起きたら麻痺していたというケースです。
普段なにも意識することなく体を動かし、歩いたり、手を動かしたりできるのは体全身に分布する神経が正常に働いてくれているからですが、神経が何らかの原因で障害され、動かなくなったりすると、無意識に体を動かせることがいかにありがたいことであるかと改めて気づかされます。
腕に走る3つの神経
腕に走行する神経は、橈骨神経、正中神経、尺骨神経の3つです。
前腕部では、橈骨神経は親指側、尺骨神経は小指側、正中神経は真ん中を走行します。
橈骨神経の麻痺が橈骨神経麻痺、正中神経の麻痺が正中神経麻痺(猿手)、尺側神経の麻痺が尺側神経麻痺(わし手)です。
どの神経も障害される可能性はありますが、橈骨神経は上腕骨の近くを走行がする部分が特に麻痺を起こしやすい部分です。後骨間神経麻痺は肘部分での圧迫により発症します。